【前編】古民家リノベを依頼するならどんな会社? 〜ハウスメーカー、工務店、設計事務所の違い〜
明治20年創業、古民家リノベーションを得意とする倉敷市児島の老舗工務店、なんば建築工房。
古民家のリノベーションを検討する際、依頼する会社の選択は成功を左右する重要な要素です。近年では古民家再生を手がける会社も増え、インターネット上には魅力的な事例や情報があふれています。しかし、いざ依頼先を決めようとすると、ハウスメーカー、工務店、設計事務所のどれを選べばよいのか、それぞれの違いは何なのか、迷われる方も多いのではないでしょうか。
今回は、倉敷市児島で長年家づくりと古民家再生に携わるなんば建築工房の正田社長に、各社の特徴や得意分野についてお話を伺いました。前後編に分けて、失敗しない会社選びの本質に迫ります。
正田 順也 (まさだ じゅんや)
大阪生まれの奈良育ち。大学進学をきっかけに岡山へ移住し、住宅業界歴は30年超。
職人の伝統技術を活かすため、古民家再生・空き家利活用・地域づくりに力を入れている。
(一社)全国古民家再生協会岡山第一支部 代表理事
(一社)全国空き家アドバイザー協議会 岡山県倉敷支部 事務局長
町おこし団体 下津井シービレッジプロジェクト 事務局長
古民家鑑定士インストラクター ほか
広告やSNSの見せ方が上手くなっている今、どう選ぶ?
――最近は古民家を扱う住宅会社が増えてきました。ホームページやSNSを見ても素敵な事例が多く、どのように会社を選べばよいか迷います。
正田「最近はAIなどの技術も発達し、広告やSNSでの発信が得意な会社が増えました。集客に特化しているところは、見せ方が本当に上手です。しかし、家づくりにおいて実際に手を動かすのは現場の職人です。表面的な表現のうまさだけでなく、会社の本質的な部分をしっかりと見極める必要があると思います」
――具体的に、会社のどんなところを見れば良いでしょうか。
正田「例えば、古民家再生ができることを謳っていても、実際には現場に経験のある職人がいない、営業主体の会社もあります。そうした会社に依頼すると、木を活かす知識や自社保有の材料を持たないため、見た目はきれいでも、どこか画一的な仕上がりになってしまったり、建材で覆われたアパートのような空間になってしまうこともあるようです。本来の古民家の良さである太い柱や梁を活かすリノベーションを求めているのであれば、実際の施工体制や技術力を確認することが重要となります」
主なリノベ依頼先 – ハウスメーカー、工務店、設計事務所
――古民家リノベーションを依頼する会社には、どのような種類があるのでしょうか。
正田「よくある一般的なパターンとしては大きく分けて3つあります。
1つ目は、ハウスメーカーです。テレビCMや広告などでよく目にしたり、ショッピングモールの相談窓口や、住宅展示場などに出展していることも多く、最初に資料請求などをして候補に入れる方が多いですね。
2つ目は、工務店です。地域に根ざして家づくりを行っており、私たちなんば建築工房もこの中に入ります。
3つ目は、設計事務所です。設計力やデザイン力に特化しており、一般的に施工は外注となります。
古民家リノベーションを検討される方は、主にこの3つのいずれかから依頼先を選ぶことになります」
全国展開の安心感。ハウスメーカーとパワービルダーの特徴
――まずはハウスメーカーの特徴を教えてください。
正田「ハウスメーカーの多くは、戦後の住宅不足や高度経済成長期の大量供給ニーズを背景に生まれました。
実はそのルーツをたどると、鉄鋼メーカーや化学メーカー、電機メーカーなど、もともと住宅とは異なる業種から参入した企業も少なくありません。
異業種で培った工業化技術や生産管理のノウハウを住宅建築に応用し、”品質を均一化しながら効率よく家を供給する”という考え方を発展させてきたのがハウスメーカーの大きな特徴です。
そのため、独自の規格やシリーズを持ち、自社工場で部材を生産して現場で組み立てる手法が一般的です。工業製品に近い発想で家づくりを行う会社が多いですね。住宅展示場に出展していたり、テレビCMや広告でよく目にするため、知っている会社だからと選ぶ方も多いのではないでしょうか」
――ハウスメーカーを選ぶメリットとデメリットを教えてください。
正田「メリットは、安定した品質と保証です。断熱、耐震など、住宅性能が数値で示されており、施工手順も定められているため、工期も短く済みます。また、全国展開しているため、会社の経営に関するリスクも低く、保証面が充実しているという安心感は大きいです。大量生産のため、品質の安定した規格品や既製品を多用していることも特徴の一つです。
一方、デメリットとしては、多額の広告宣伝費がかかっているため、費用が割高になる傾向があります。また、規格化されているため、間取りの制約が多かったり、本物の無垢材を使いたいといった個別の細かなこだわりが実現しにくい点も挙げられます。商品として家を買う感覚に近く、『〇〇ホームの家に住みたい!』という方は、ハウスメーカー以外の選択肢がないこともありますね」
――パワービルダーと呼ばれる会社もありますが、どういった違いがありますか。
正田「パワービルダーは、全国展開している『規模の大きな工務店』のような位置づけです。各社で設計やデザイン、価格設定などに独自性を持たせており、ハウスメーカーと地場の工務店の中間のような存在です。ある程度の品質を保ちつつ価格が抑えられているのが強みですが、省エネブームやデザインブームなど、その時々のトレンドに乗った商品を展開することが多いため、数十年住み続けた時に、すでに過去のブームとなっていることもあります。継続性という点では、よく検討する必要があります」
当たり外れが大きい?工務店の特徴
――地場の工務店についてはどうでしょうか。
正田「工務店は、地域に密着して家づくりを行っている会社です。規模は社長1人でやっているところから、数十名のスタッフを抱えるところまで様々です。地域の気候風土や特性に合った家づくりを得意としており、中にはハウスメーカーよりも建物の性能を重視している会社もあれば、自社職人による施工力を重視している会社もあります」
――工務店の強みはどこにありますか。
正田「独自性が強く、自由度が高いことです。特に施工力に特化している工務店であれば、外から見たデザインだけでなく、建った後の耐久性や性能の担保、使いやすさなど、何十年経ってもしっかりしている家を建てることができます。家を人間に例えるなら、表面的な服装だけでなく、体の中身からしっかりつくり込むようなイメージですね」
――逆に、工務店のデメリットや気をつけるべき点はありますか。
正田「会社によって技術力や経営状態、保証体制に大きなばらつきがあることです。一言でいえば、当たり外れが大きいと言えます。素晴らしい技術を持っている会社や、万全の保証体制を整えた工務店もあれば、施工基準や保証も明確に決められていない会社もありますし、会社の規模感によっては将来の継続性に不安が残る場合も考えられます。また、最近では工務店といっても、多くは自社に職人を持たず、施工をすべて外注に出す営業会社化している傾向があります」
――当たり外れを見極めるにはどうすればよいのでしょうか。
正田「工務店に関していえば、ちょっと難しいのですが、お客様自身が見る目を養うことが大切です。やはり、どの会社も自分たちの良い面や、お客様に受けやすいポイントばかりをアピールしがちです。設計やデザインといった表面的な部分だけでなく、施工力や保証体制、標準仕様までしっかり確認することが大事です。そのためには、ホームページのきれいな写真や施工例だけに騙されず、実際の建築現場を見に行ったり、じっくり相談したりして、会社の実態を確認してみてください。また、万が一の倒産に備える完成保証をかけられる会社かどうかなど、経営状況や保証面も確認しておきたいポイントです。
自分にマッチする会社と出会えれば、工務店は永く住み続けられる家のことも、その地域のこともよく知っていますから、他の選択肢よりもずっと良い家づくりができると思います」
デザインにこだわりたい方へ。設計事務所の特徴
――設計事務所の特徴を教えてください。
正田「設計事務所は、設計力が非常に高く、デザインを重視したい方や、特殊な用途を前提とした家の設計を行いたい方に向いています。例えば、店舗設計に特化した事務所や、宿に特化した事務所などもあります。設計に関する深い知識や経験があり、お客様の要望を汲み取って独自の空間を提案してくれるのが特徴です。ただし、設計と施工が明確に分かれていことが多く、一般的に、設計事務所が描いた図面をもとに施工は別の工務店が行います」
――施工は別の会社が行うのですね。
正田「中には、職人を抱える設計事務所や、提携工務店にのみ発注する会社もありますが、外注するのが一般的です。
一点注意が必要なのは、外注の際、複数の工務店に見積もりを出させて一番安い会社を選ぶ競争入札という方式がとられることがあります。価格を抑えられるメリットもありますが、工務店側が図面を受け取って精緻な見積もりを作るには、2週間から1ヶ月程度の時間と経費がかかります。仕事が欲しいがために、無理な安値で落札した工務店が、見えない部分で手を抜かずに丁寧に施工してくれるか、あるいは経営状態が大丈夫なのか、といった点はまた別の問題です。また、建てた後のメンテナンスや不具合の保証は、設計事務所ではなく施工した工務店が行うことが多いため、施工会社の質や保証体制をお客様自身が見極める必要があります」
どうやって会社を見つける?
――最後に、どうやって建築会社を見つけるのが良いでしょうか。住宅相談カウンターや一括見積もりサイトなどはどうでしょうか。
正田「相談カウンターや一括見積もりサイトは非常に便利ですが、そういったサービスを経由して成約すると、工務店側は多額の紹介手数料を支払っていることに留意が必要です。つまり、実質的にお客様の建築費から中間マージンが抜かれている状態になります。なので、手間はかかりますが、できれば直接、会社さんを探して訪問することで、最も良い結果が得られるとは思います」
――会社によって、品質や建築の基準についても何か違いがあるのでしょうか。
正田「家づくりにおける施工の基準でいうと、建築基準法で定められているのは全体のわずか数パーセントに過ぎません。フラット35などの基準を満たしても半分程度です。残りの半分以上の施工品質は、それぞれの工務店の良心や技術力に委ねられています。現場を預かる会社の姿勢や職人の体制が極めて重要です。だからこそ、お客様自身が会社の良し悪しを見極める目を育てて、自分の家づくりの『軸』を決め、営業さんや広告の言葉に惑わされないことが大切になると思います」
前編では、ハウスメーカー、工務店、設計事務所の基本的な特徴と、それぞれのメリット・デメリットについて解説いただきました。会社ごとの成り立ちや仕組みの違いが、家づくりに大きく影響するのですね。
次回の後編では、これらの会社が古民家リノベーションにおいてどのような得意・不得意を持っているのか、価格や見積もりには表れない職人の技術や素材、そして目に見えない保証の重要性についてさらに深く掘り下げていきます。
リノベーション、古民家再生のお問い合わせはなんば建築工房へ
まずはお気軽にご相談ください。
「実家を二世帯にしたい」「平屋化して将来に備えたい」「古民家を店舗に活用したい」――複数案を比較し、最適解を一緒に決めていきます。
なんば建築工房は、自社職人による確かな施工力と、古民家を含む難しい案件への対応力で、多くのお客様に選ばれてきました。住まいの将来に悩んでいる方、他社で断られた方も、ぜひ一度ご相談ください。
また、古民家再生総合調査(有料)も行っています。
なんば建築工房は、一般社団法人全国古民家再生協会(以下「古民家再生協会」)の会員です。古民家再生協会は、古民家で唯一の全国団体で、古民家鑑定士の有資格者が加入できます。所属しているリフォーム事業者の会員が古民家の調査(インスペクション)をおこない、古民家の状態を明確にし、再生に適した再築基準を用いて安全・安心で快適な暮らしを実現するために活動をしています。
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