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【後編】古民家リノベを依頼するならどんな会社? 〜見積もりに表れない「職人・素材・保証」〜

明治20年創業、古民家リノベーションを得意とする倉敷市児島の老舗工務店、なんば建築工房。

前編では、古民家リノベーションの依頼先となるハウスメーカー、工務店、設計事務所について、それぞれの成り立ちやメリット・デメリットを、なんば建築工房の正田社長に解説していただきました。

前編はこちら
【前編】古民家リノベを依頼するならどんな会社? 〜ハウスメーカー、工務店、設計事務所の違い〜

後編となる今回は、「リノベーション・古民家再生」に的を絞り、各社の得意・不得意をさらに深掘りします。そして、価格や見積書には決して表れない「職人」「素材」「保証」という3つの見えない差について、プロの本音を伺いました。会社選びで後悔しないための、最終チェックポイントです。

正田 順也 (まさだ じゅんや)
大阪生まれの奈良育ち。大学進学をきっかけに岡山へ移住し、住宅業界歴は30年超。
職人の伝統技術を活かすため、古民家再生・空き家利活用・地域づくりに力を入れている。

(一社)全国古民家再生協会岡山第一支部 代表理事
(一社)全国空き家アドバイザー協議会 岡山県倉敷支部 事務局長
町おこし団体 下津井シービレッジプロジェクト 事務局長
古民家鑑定士インストラクター ほか


新築が得意な会社は、リノベが苦手?

――「リノベーション」に絞った場合、ハウスメーカー、工務店、設計事務所それぞれの得意・不得意はどうなるのでしょうか。

正田「大前提として、新築とリノベーションは全くの別物と考えてください。新築は決まった材料を集めて図面通りに進める、いわば机上が中心となる仕事です。しかしリノベーション、特に古民家は、壁や床を開けてみないと分からない不測の事態が次々と起こるため、現場での対応力がすべてになります。

この点において、新築を主力としているハウスメーカーは、その仕組み上、リノベーションをやや苦手とする傾向があります。自社で建てた家の定期的なメンテナンスや、水回りだけを新しくするような小規模なリフォームは得意ですが、骨組みから直すようなイレギュラーな工事は難しいことが多いです。

一方で、大手の中にはリフォーム専門の部署やグループ会社を持っているところもあります。そういった会社は、リフォームに特化した技術を持っているので、同じハウスメーカーでも対応力は変わってきます」

――ハウスメーカー系の会社にリノベを依頼した場合、仕上がりに特徴はありますか?

正田「規格化された家づくりをしてきた会社は、職人さんも規格品・既製品の建材を使った施工に慣れていることが多いです。また、大手ハウスメーカーの場合、自社職人を持たず、外注の職人さんにお任せするケースも多く、依頼時に実際どこまでイレギュラーな対応をしてもらえるのかについては、不透明になりがちです」

リノベに「いつも通り」はない。フルリノベーション対応力の差

――工務店の場合はどうでしょうか。

正田「工務店も、新築が得意な会社とリノベが得意な会社ではまったく違います。解体してみたら配管が劣化していた、柱や梁が腐っていた、といった不測の事態が必ずと言っていいほど起こります。その場その場で判断し、対応する現場力が問われるんです。同じものを大量に作ってきた会社や、新築しかやってこなかった会社には、この対応がなかなか難しい」

――工務店なら、どこでもリノベに対応できるわけではないのですね。

正田「そうです。工務店の中にも、水回りや設備交換といった小規模リフォームが得意な会社、中規模が得意な会社、そして構造から手を入れる大型リノベーションができる会社と、規模による得意分野があります。

実は、数千万円規模の大型リノベーションを実際に何棟も手がけた経験のある工務店は、かなり少ないんです。今は新築が減ってリノベーションが増えている時代なので、『リノベできます』と打ち出す会社は増えていますが、耐震や断熱まで含めた大規模な改修の実績があるかどうかは、しっかり確認していただきたいところです」

――設計事務所についてはいかがでしょうか。

正田「設計事務所は、それぞれに得意分野がはっきりしています。店舗が得意な人、病院が得意な人、飲食店が得意な人、そして一般住宅や古民家が得意な人。リノベーションや古民家をやりたいのであれば、その分野の実績が豊富な設計者を選ぶこと。これに尽きます」

見積もりに表れない差①「職人」

――価格や見積書に表れない部分についても教えてください。会社選びの時に、どんなところを見たら良いでしょうか。

正田「一つ目は職人です。大きくは、自社の職人さんが施工するか、外注の職人さんにお任せするか、の二択になります。近年は、経営上の理由などから、職人は外注とする会社さんが多くなってきています。外注が一概に悪いわけではありませんが、仕組み上のリスクがあります。外注の職人さんは、『この現場は手間賃いくら』と決まった金額で仕事を請けていることが多いんです。そうすると、早く終わらせるほど利益が出る構造になります。

先ほど言った通り、リノベの現場では不測の事態が次々に出てきます。本来なら、このタイミングで根本から直したほうがいい。でも、決まった金額で請けている大工さんがそれを直していたら、自分の給料が減ってしまう。結果として、見て見ぬふりをして工事を進めてしまうケースが、残念ながらあるんです」

――傷んだ部分が、直されないまま壁の中に隠れてしまうことがあるんですね。

正田「『自分は言われたことをやっているだけ。責任は工務店が持つんでしょう』という感覚になりやすいんですね。実際、リフォーム済みの家を後から解体してみたら、土台が細切れの木材でつぎはぎされていた、という話もあります。表からは見えなくなる部分だからこそ、施工する人の姿勢がそのまま品質になります。

その点、自社で職人を抱えている会社は、手間賃を叩く構造ではなく、かかる分はかかるものとして計算します。正直、価格には反映されますが、不測の事態が出てきたときに、その場で相談しながら根本から直せる。何十年も住む家を預かる以上、私はそこが一番大事だと思っています」
(※大型リノベーションの費用相場については「古民家リノベーションの費用はいくらかかる?」で詳しく解説しています)

見積もりに表れない差②「素材と技術」

――他にも注意して見るべきポイントはありますか。

正田「使っている素材についても、ぜひ注目してみてください。まず、お客様が既製品やカタログ品の内装で満足できるのであれば、どの会社を選んでも大きな差は出にくいと思います。建材メーカーの製品を仕入れて取り付ける、という点では同じだからです。

しかし、本物の木の家、和の家、そして古民家となると話は別です。無垢の木材を自社で持っているか、木材を刻む加工場や倉庫があるか。ここで会社の実力がはっきり分かれます。

最近は、工務店といっても企画・広告・販売と設計だけを行い、現場はすべて外注に投げる、営業会社のようなところも増えています。そういった会社には、当然、材料も加工場もありません。木を活かすリノベーションを求めるなら、材料と加工場を持っている会社を選んでください」

――「技術力」についてはどう見極めればよいでしょうか。

正田「性能の根拠をきちんと説明できるかどうか、です。耐震ならこの評点、断熱ならこのレベル、と数値で示せるか。ハウスメーカーやパワービルダーはカタログに性能値を明記していますが、工務店はここが弱いところも正直あります。だからこそ、質問してみてください。曖昧な答えしか返ってこない会社は要注意です。

もう一つは、資格者がいるかどうか。例えば古民家であれば、古民家鑑定士のような専門資格を持つ人間が在籍しているか。耐震であれば耐震診断の資格者がいるか。技術の裏付けとして、分かりやすい判断材料になります」
(※古民家の耐震診断の進め方については「古民家鑑定士が教える古民家耐震の進め方とは?」で詳しく解説しています)

見積もりに表れない差③「保証」

――他に、契約前に必ず確認すべきことはありますか?

正田「もう一つ、着目すべきポイントに『保証』があります。実は、一番差が大きいのが保証かもしれません。工務店の中には、保証がほとんどないところもあります。『何かあったらいつでも言ってください、頑張ります』と言うだけで、保証の基準が何も定められていない会社も、実際にあるんです。

保証は大きく分けて、『工事中』と『住み始めた後』の2段階で考えてください。

まず工事中の保証です。万が一、工事の途中で会社が倒産しても家の完成が守られる『完成保証』をかけられる会社かどうか。建築会社が完成保証を提供するためには、経営状況の審査があります。すなわち、完成保証をかけられる会社イコール経営が安定している会社、と捉えられます。加えて、工事中に火災や水害、風災害といった不測の事態が起きたときの工事保険に入っているかどうか。建築中の建物は、まだお客様の火災保険の対象ではありませんから、ここは意外な盲点です」

――住み始めた後の保証には、どんなものがありますか。

正田「代表的なのが瑕疵(かし)保険です。雨漏りや構造の欠陥といった施工不良に備える保険で、新築では加入が義務化されていますが、実はリノベーションやリフォームでは義務ではありません。リフォーム瑕疵保険をかけるには会社が保険法人に事業者登録をしている必要があるので、『リフォーム瑕疵保険をかけられる会社かどうか』も、信頼できる会社を見分ける一つの基準になります。リフォーム分野はいろいろな業種が参入していて、残念ながら悪質な業者も存在しますから。

それから設備の保証です。キッチンやお風呂、給湯器などは、メーカー保証の範囲内、つまり1年程度で切れてしまうのが一般的です。当社のケースでは、キッチン・お風呂・エコキュートといった住宅設備に、独自に10年保証を付けています。ほかにも、地盤やシロアリの保証、万が一の施工不良で水漏れなどが起きて家財や床に被害が出たときの損害賠償保険まで、当社では体制を整えています。

施工の不良は、ゼロに近づける努力はできても、絶対にゼロとは言い切れません。だからこそ、起こったときにどう対応してくれる会社なのか。保証の基準が明確に定められているかどうかを、契約前に必ず確認してください」

まとめ〜広告ではなく、会社と人を見る〜

――最後に、会社選びで迷っている方へメッセージをお願いします。

正田「今はAIも発達して、どの会社も広告やSNSでの打ち出し方がどんどん上手くなっています。フランチャイズに加盟すれば、反響が出ると数値で実証された広告一式が本部から送られてきて、社名だけ変えて出せる時代です。つまり、広告の上手さと施工の実力は、まったく別物なんです。

だからこそ、見学会に行くだけでなく、ぜひ会社そのものに足を運んでみてください。加工場や倉庫があるか、材料を持っているか、職人がいるか、現場や倉庫が整理整頓されているか。性能の根拠と保証の内容を、きちんと説明してくれるか。

そして最後は、人と人です。スタッフの雰囲気や誠実さは、会って話せば必ず伝わります。ご自身の家づくりの軸を決めて、広告の言葉ではなく、会社の本質を見て選んでいただきたい。それが、後悔しない古民家リノベーションへの一番の近道だと思います」

前後編にわたって、古民家リノベーションの会社選びについて解説いただきました。価格や見た目の事例写真だけでは分からない「職人・素材・保証」の差が、何十年先の住まいの安心を左右する。会社に足を運び、本質を見極めることの大切さが伝わったのではないでしょうか。


リノベーション、古民家再生のお問い合わせはなんば建築工房へ

まずはお気軽にご相談ください。
「実家を二世帯にしたい」「平屋化して将来に備えたい」「古民家を店舗に活用したい」――複数案を比較し、最適解を一緒に決めていきます。

なんば建築工房は、自社職人による確かな施工力と、古民家を含む難しい案件への対応力で、多くのお客様に選ばれてきました。住まいの将来に悩んでいる方、他社で断られた方も、ぜひ一度ご相談ください。

また、古民家再生総合調査(有料)も行っています。
なんば建築工房は、一般社団法人全国古民家再生協会(以下「古民家再生協会」)の会員です。古民家再生協会は、古民家で唯一の全国団体で、古民家鑑定士の有資格者が加入できます。所属しているリフォーム事業者の会員が古民家の調査(インスペクション)をおこない、古民家の状態を明確にし、再生に適した再築基準を用いて安全・安心で快適な暮らしを実現するために活動をしています。

お問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。
または資料請求ページより、古民家再生の事例が載ったパンフレットをお届けいたします。

◆関連する質問

あります。新築と違いリフォームでは加入が義務化されていませんが、保険法人に事業者登録をしている会社であればリフォーム瑕疵保険をかけられます。登録の有無は、信頼できる会社かどうかを見分ける基準の一つになります。

耐震・断熱まで含めた大規模改修の施工実績が実際にあるか、自社に職人と加工場・材料があるかを確認してください。「リノベできます」という打ち出しと実績は別物です。会社見学で直接確かめるのが確実です。

加工場や倉庫、材料の有無、現場の整理整頓、そして耐震・断熱など性能の根拠と保証基準をきちんと説明できるかを見てください。最後はスタッフの人柄や誠実さも大切な判断材料です。