「古民家を残すという選択」下津井から学ぶ、未来の家づくりと地域のあり方
―高梁川志塾での講演を通して感じたこと―
人がつないできた地域の物語を未来へ
本日、高梁川志塾にて「下津井の歴史」と「持続可能なまちづくり」をテーマに講演の機会をいただきました。
下津井は、北前船の寄港地として栄え、海の恵みと人の営みが折り重なりながら独自の文化を築いてきた地域です。古い路地や、北前船で繁栄した時期の街並みと漁村の風景が残ります。
参加された皆さんの熱心な姿勢からは、
「地域を良くしたい」
「未来のために学びたい」
という強いエネルギーを感じ、私自身とても様々な話しを聞くことができて勉強にもなりました。
地域づくりは、建物や制度ではなく、そこに関わる“人”がつくるもの です。
今日の学びが、皆さんの挑戦の背中を少しでも押すことができたのなら、それほど嬉しいことはありません。
古民家リノベと古材活用が地域を元気にする
なんば建築工房では、長年にわたり 古民家リノベーション、空き家古民家の活用、古材の利活用 に力を入れてきました。
古民家は単なる「古い建物」ではありません。
地域の歴史や暮らし方が詰まった“文化資源”です。
しかし近年、空き家古民家の増加により、貴重な古材が解体処分されるケースも少なくありません。
私は、
「壊すだけでは、地域の価値は残らない」
と考えています。
梁、柱、欄間、建具などの古材は、適切に扱えば次の100年にも使える素材です。
古民家の持つ趣や温かさを現代の暮らしに生かすことで、
・地域景観の保全
・資源循環(リユース)
・まちの文化価値の向上
といった、地域全体の豊かさにもつながります。
また、古材を活用した住まいは、性能面の向上を図りながらも、唯一無二の雰囲気が得られるため、家づくりを検討される方にも大きな魅力があります。建築屋としてこのような古民家を守っていきたいと思います。
地域と職人が手を携えてつくる、これからの家づくり
昔の大工は、家を建てるだけでなく、地域の行事や暮らしを支える“家守(いえもり)”のような存在でした。
住まいづくりを通して地域とつながり、そこで暮らす人々を支えていました。
ところが現代では「家を買う」ことが主流となり、家づくりと地域が切り離され、合理化だけが先行する時代になってきました。
私は、そこにもう一度「つながり」を取り戻したいと思っています。
家は、その地域の景観をつくり、家族の暮らしを守り、未来を育てる大切な存在です。
だからこそ、
地域の特性を知り、文化を理解し、その土地の物語を大切にする家づくり
が、これからの時代にはより求められていくはずです。
古民家再生も空き家活用も、その延長線上にあります。
古いものをただ壊すのではなく、
残せるものは残し、生かせる素材は生かし、
次の世代へ地域の価値をつなげていく。
これこそが、私たち工務店にできる地域活性化の一つだと感じます。
高梁川流域には、豊かな自然、独自の文化、多様な人のつながりがあります。
今回、志塾の皆さんと学ばせていただき、
“この地域にはまだまだ大きな可能性がある”
と改めて実感しました。
なんば建築工房として、
古民家リノベ × 地域まちづくり × 古材利活用
を軸に、地域を元気にする活動をこれからも続けていきます。
ご参加いただいた皆さま、運営の皆さま、改めてありがとうございました。
これからも地域の仲間として、共に歩んでいければ幸いです。