天然乾燥材と人工乾燥材、無垢材と集成材の違いとは?
岡山県倉敷市で、オールヒノキの家づくりにこだわる「なんば建築工房」。
代表であり、古民家鑑定士・岡山県南部古民家再生協会の理事も務める正田順也社長に、天然乾燥材と人工乾燥材、無垢材と集成材の違いについてインタビューしました。築100年以上の古民家を数多く鑑定してきた正田社長。木の扱い方ひとつで、家の寿命も変わる——そんな話を、ぜひご一読ください。
家に使う木は、乾燥が命
正田「木を乾燥させる方法には大きく2種類あります。天然乾燥と、人工乾燥です。天然乾燥は、伐採した木を、数ヶ月〜数年かけてじっくり乾燥させます。人工乾燥は、数十度から百度超の熱を与えることで、強制的に乾燥させます。」
――家づくりにおいて、なぜ木を乾燥させる必要があるんでしょうか?
正田「木は、乾燥させないとカビが生えたり、自然に反ったり割れたりします。木は生きているので、動くのが当たり前なんですね。家を建ててから、柱が反ってしまったり、梁が割れたりしてしまったら大変ですよね。なので、木は伐採して、製材してから、しっかりと乾燥させて使います。乾燥中にも木が動くので、長い時間をかけて乾燥させる天然乾燥材は、“背割れ”といって、木の背に切れ込みを入れて、乾燥による収縮を調整する加工がされます。」

天然乾燥材と人工乾燥材の違い
――天然乾燥材と人工乾燥材の違いについて教えてください。
正田「天然乾燥材は、長い時間をかけてじっくり乾燥させるので、一方、木に含まれる油分や香りが保たれやすくなります。なので、数十年経っても木の艶が美しいのが特徴です。家に入った時にふわっと香る木の香りが良く、リラックス効果もあります。ただ、非常に手間と時間がかかるので、現代では天然乾燥材を入手するのは難しくなっています。」
正田「一方、人工乾燥材は高温の釜で一気に乾かすので、大量生産や流通に向いています。ただ、効率は良いのですが、その過程で木の成分も飛んでしまうんです。短期的な強度では問題なくても、長い目で見ると粘りや耐久性に影響してきます。だから10年、20年と使っていくと、自然乾燥材のほうが断然強くなるんです。特に、木は伐採されてから200年〜300年かけて、強度が2〜3割上がるという実験結果もあります。逆にコンクリート、鉄は作った瞬間がピークで、経年と共に強度は落ちていきます。」
――なんば建築工房では、天然乾燥材と人工乾燥材のどちらを使っているんでしょうか?
正田「100%天然乾燥材です、と言いたいところですが(笑)、コスト面を考慮して、通常は柱に人工乾燥材を、梁に天然乾燥材を使用しています。柱は、木に対して縦方向に力がかかるため、木の強度が発揮されやすいのですが、木に対して横方向の力が掛かる梁は、特に粘りや長期的な強度が必要とされるため、天然乾燥材を用いています。もちろん、ご希望があれば100%天然乾燥材を使用することも可能です。当社は、特に構造美を魅せるような家づくりをしているので、構造材へのこだわりは人一倍ありますね。」

奈良県・吉野産の天然乾燥材ヒノキへのこだわり
――どのように天然乾燥材を調達しているのですか?
正田「奈良県吉野の山にある製材所から直接買い付けています。一般的な建築会社では、加工会社から、カットされた木材を仕入れているのですが、当社は奈良県の山中に倉庫を保有していて、必要な分を加工工場や自社に送って加工する、という方法をとっています。これによって、質の良い吉野産の、天然乾燥のヒノキを安定的に使用することができています。」
――天然乾燥材だけで家を建てるのは、難しいんでしょうか。
正田「難しいというか、流通が少ないですね。特に梁材はプレカット工場に頼むと、基本的に輸入材の人工乾燥材になります。なので、当社では、奈良県の吉野に倉庫を借りて、自社で在庫管理しているんです。その分コストは上がりますが、素材にこだわる家づくりをするなら、そこは譲れないですね。」
――天然乾燥材を選ぶ意味とは?
正田「木に無理をさせず、長く、美しく、安心して使えるという点ですね。自然の力を活かした家づくりっていうのは、使う人にも優しいんです。経済合理性だけじゃなくて、心地よさを選ぶということですね。」

無垢の木・オールヒノキへのこだわり
――なんば建築工房では無垢の木にもこだわっていますね。
正田「無垢の木は、天然の木を切り出したまま、接着などの加工をしていない材木のことです。一方で、集成材は、小さく切った木材を接着剤で貼り合わせて1本の材にしたもの。見た目はしっかりしていますが、やはり工業製品という感じで自然の粘りがないですね。耐久性というよりも、短期的な強度重視の材だと思います。」
――フローリング材でも違いがありますか?
正田「あります。集成材やプリント合板は、表面が剥げたり塗膜が割れたりします。でも、無垢材なら削って再利用できるし、オイル塗ってまた使える。長く使える素材ですね。」
――住宅に向いている木材ってあるんでしょうか?
正田「理想は、自然乾燥の無垢材が一番いいと思います。耐久性も、美しさも段違いですね。当社は柱も梁も土台も全部オールヒノキの無垢材で、梁は自然乾燥にこだわっています。年月とともに艶が出てきて、経年変化が美しいですね。」
――他の木と比べて、ヒノキにはどんな特徴がありますか?
正田「ヒノキは湿気に強くて、虫もつきにくいです。あと、加工もしやすいのが特徴です。柱だけじゃなくて、枠材とか建具にも向いていますね。最近は、輸入材の米松が多く流通しています。米松は生育が早いため、生産効率に優れますが、その分強度は劣ります。」
――なんば建築工房では、どのくらいの樹齢のヒノキを使っているんでしょうか。
正田「当社で使っているのは、梁材については多くが60年以上、300ミリ以上の寸法になると100年以上のものもあります。平均をとると70年位といったところでしょうか。柱材については、まちまちですが、40年くらいから80年くらいの木もあります。長い年月をかけてゆっくり生育された目の詰まったヒノキほど、強度も香りも良くなるんです。」


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