なんば建築工房
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【伝統技術を現代に 林原美術館東蔵の階段づくり】

岡山県倉敷市の工務店、なんば建築工房の正田です。

今回ご紹介するのは、岡山市の県庁付近にある「林原美術館 東蔵(登録有形文化財)」の耐震改修工事で、なんば建築工房が手がけた階段の一部です。古民家や文化財を扱う私たちにとって、こうした歴史ある建物の改修は特別な意味を持ちます。

写真に写っているのは階段の踏板に取り付けた滑り止めです。一般的にはゴム製の既製品が簡単に取り付けられますが、ここでは硬質なカリン材を使用しています。カリンは木目が美しく硬さがあり、滑り止めとしての機能を保ちながら、木の温かみを損なわずに仕上げています。伝統的な手法で溝を彫り込むことで、見た目にも機能的にも優れた仕上がりです。

もう一つの写真は「アリ桟(ありざん)」と呼ばれる加工を施した木材の断面です。これは木材が反らないようにするための工夫です。無垢材を使用する場合、季節や湿度によって膨張や収縮が発生しやすく、そのままでは時間とともに反りや割れが生じる可能性があります。

アリ桟は、木の裏側に溝を掘り、そこに別の木材を差し込むことで、自然な動きを抑える構造です。写真のように、木材同士がしっかりと組み合わさることで、階段の強度が確保され、長期間にわたって安定した状態を保つことができます。

特に古民家や文化財建築を扱う際は、こうした伝統的な技術が重要です。岡山県で数多くの古民家リノベーションや文化財の修復を手がけてきた私たちなんば建築工房は、職人たちの手仕事を大切にしながら、現代の安全性や機能性も両立しています。

古材を活かし、伝統技術を未来に伝える家づくり。これからも、地元岡山で、確かな技術と想いを持って建築に取り組んでいきます。