読み物
もっとなんばを知る

買ってはいけない古民家【前編】〜安い物件には理由がある〜

倉敷市児島で創業139年を迎える老舗工務店、なんば建築工房。長きにわたり地域に根ざした家づくりを行ってきた同社には、古民家再生に特化した専門家が在籍しています。

今回は、古民家鑑定士や伝統再築士の資格を持ち、かつ岡山県内で古民家鑑定士を育成するインストラクターとしても活動しているなんば建築工房代表の正田順也氏に、古民家リノベーションにおける「買ってはいけない古民家」について伺いました。

古民家でのスローライフや、趣のある空間を活かしたカフェや宿泊施設の開業など、古民家に対する関心は年々高まっています。しかし、その人気の裏で「安かったから」「敷地が広くて魅力的だったから」という理由だけで購入に踏み切り、後悔するケースが後を絶ちません。

今回は、倉敷市児島で長年家づくりに携わる老舗工務店「なんば建築工房」の代表であり、古民家再生協会の理事・古民家鑑定士でもある正田社長に、「買ってはいけない古民家の特徴」についてお話を伺いました。全2回にわたるインタビューの前編として、建物の見極め方を中心にお届けします。

正田 順也 (まさだ じゅんや)
大阪生まれの奈良育ち。大学進学をきっかけに岡山へ移住し、住宅業界歴は30年超。
職人の伝統技術を活かすため、古民家再生・空き家利活用・地域づくりに力を入れている。

(一社)全国古民家再生協会岡山第一支部 代表理事
(一社)全国空き家アドバイザー協議会 岡山県倉敷支部 事務局長
町おこし団体 下津井シービレッジプロジェクト 事務局長
古民家鑑定士インストラクター ほか


よくある古民家購入の失敗とは?

――――近年、地方へ移住し、古民家を購入してリノベーションを楽しむ方が増えていますが、一方で失敗してしまうケースも多いと聞きます。古民家鑑定士の視点から見て、よくある購入の失敗とはどのようなものでしょうか。

正田「もっとも多い失敗の要因は、『物件価格の安さ』だけで安易に購入を決めてしまうことです。古民家探しをしていると、驚くほど安い価格で売りに出されている物件に出会うことがあります。初期費用を抑えられたと喜んで買ったものの、購入後に建物の構造的な問題が発覚したり、想定をはるかに超える改修費用が必要になったりと、建物の問題やお金の問題に深く悩まされるケースが多く見受けられます」

――「安い」というメリットの裏には、必ず理由があるということですね。

正田「はい。特に古民家は、一般的な中古住宅とは異なり、現代の建築基準法が制定される前に建てられた伝統構法によるものが多く存在します。そのため、目に見える表面的な部分だけでなく、建物の見えない部分(構造や基礎など)が現在どういう状態にあるのか、そして今後安全に維持していくためにどれだけの費用や手間がかかるのかを、購入前に冷静に見極める必要があります。安易に手を出すと、取り返しのつかないトラブルに巻き込まれることになります」

買ってはいけない古民家の特徴① 必要以上に規模が大きい

――具体的に「買ってはいけない古民家」の特徴について教えてください。

正田「1つ目は必要以上に規模が大きい古民家です。都会から地方に移住してくる方は、どうしても広い敷地や大きな建物に憧れを抱きがちです。そして、そうした大規模な物件が、都会のマンションなどと比べると驚くほど安い価格で売りに出されていることがあります。例えば、土地が400坪、建物が150坪もあるような立派な古民家が、1,500万円で売られている、のようなケースです。都会の相場から考えると、6000万〜7000万円してもおかしくないような物件ですね」

――規模から考えると、とてもお買い得に感じてしまいます。なぜ避けるべきなのでしょうか。

正田「建物の規模が大きいということは、それに比例して改修にかかる費用が膨大になるという事ことです。例えば、30坪の家を直すのであれば30坪分の改修費用で済みますが、田舎の古民家は80坪、100坪、あるいは150坪といった規模のものがあります。150坪の家をフルリノベーションしようと思ったら、建物の状態にもよりますが、1億円近い費用がかかるケースも実際にあります」

――購入価格が安くても、改修費用で莫大なお金がかかってしまうのですね。

正田「それだけではありません。敷地内に母屋だけでなく、長屋や複数の増築部分、蔵などが建っているケースもよくあります。そうした建物の中には、長年維持できずにすでに朽ち果てていて、使い物にならないものが含まれていることもあります。その場合、購入した瞬間から解体費用が発生します。建物の規模や数によっては、解体費用だけで数百万円、場合によっては1,000万円以上かかる物件もあります。購入前に、どの建物を残し、どこを解体するのか、その費用がいくらかかるのかを正確に把握しておく必要があります」

――購入後の維持費についても違いがありますか。

正田「維持費も大きな負担になります。例えば、古民家の敷地には立派な庭園が備わっていることが多いですが、その維持・管理には多額の費用がかかります。庭木の剪定、枯れ葉の掃除、草抜きなどを専門業者に依頼するなら、立派な庭であれば年間100万円〜200万円かかるケースもあります。さらに、広い土地と大きな建物には高額な固定資産税(年間数十万円など)もかかります」

――自分たちで手入れをすれば費用は抑えられますか?

正田「もちろん、費用は抑えられますが、今度は莫大な手間と時間がかかることを念頭に入れておく必要があります。規模が大きすぎる物件は、高額な改修費、解体費、そして毎年の維持費や税金が重くのしかかり、購入後に、にっちもさっちもいかなくなるという相談を、私はこれまでに何度も受けてきました。本当に自分たちが管理できる規模なのかを、しっかりと冷静に判断しなければなりません。大きい・広いからと言って、いいことばかりではありませんよ」

買ってはいけない古民家の特徴② 雨漏りしている

屋根からの雨漏り
屋根の頂点である「棟」の瓦がずれている

――他にも、買ってはいけない古民家の特徴はありますか。

正田「2つ目は雨漏りしている古民家です。家にとって、雨漏りは最大の敵です。雨漏りしているということは、その下の構造材(柱や梁など)がすべて水に濡れて傷んでいるということを意味します。建物の寿命を著しく縮め、改修費用が跳ね上がる最大の要因になります」

――雨漏りや建物の傷みを確認するためには、具体的にどこをチェックすればよいでしょうか。

正田「最も重要で、かつ分かりやすいのが『屋根の状態』です。まずは外から屋根を見てください。屋根の頂点にあたる『棟(むね)』の瓦がずれていないか、屋根の先端である『軒先(のきさき)』のラインが波打って歪んでいないかを確認します。また、下から見上げた時に、屋根を支えている『垂木(たるき)』という角材が見えますが、そこが腐っていないかも重要なチェックポイントです。これらに異常がある場合、建物全体がすでに深刻なダメージを受けている可能性が高いです」

庇(ひさし)からの雨漏り
外壁の剥がれ

正田「外壁周りも要注意です。日差しや雨を防ぐための『庇(ひさし)』が傷んでいないか、外壁の板が外れたり落ちたりしていないかを確認します。また、古い木製サッシの窓周りからは、隙間から雨水が浸入します。外壁周りが傷んでいる物件は、そこから水が入り込んでいる証拠です」

天井の雨染み、白カビ
天井からの雨漏り

正田「室内の確認では、各部屋の天井や壁に白カビ雨染みがないかを探します。ひどい場合は天井が落ちていたり、部屋の中から外の景色が見えたり、光が漏れてきたりする家もあります。光が漏れるということは、完全に隙間が空いており、そこから雨が入り放題になっている状態です」

正田「また、古民家購入の怖いところですが、過去に雨漏りをしていて『今は直してあります』と言われても、決して安心はできません。表面の雨漏りは止まっていても、過去に浸入した水によって、壁の中や天井裏の構造部分(柱や梁)がすでに腐って傷んでいるケースがあるからです」

――構造が傷んでいることに気づかずに購入してしまうこともあるのでしょうか。

正田「よくあるのが、昭和の時代に行われたリフォームです。古い柱や土壁を見えなくするために、上から合板(ベニヤ板など)を貼って覆い隠している物件があります。一見すると綺麗に直っているように見えますが、いざ本格的な改修のためにその合板を剥がしてみると、内部の柱が湿気で溶けるように無くなっていたり、床下の土台が腐って建物を支える役割を果たしていなかったりすることもあります。そうなると、建物の安全性耐震性が根本から損なわれています。きちんと安全に住める状態にするためには、建物をほぼ骨組みだけの状態にしてから構造躯体をやり直す必要があり、結果として膨大な費用がかかってしまいます。家づくりにおいて安全性は何よりも重要です。雨漏りの形跡には、くれぐれも注意してください」

買ってはいけない古民家の特徴③ 周辺に草木が茂っている、シロアリ被害に遭っている

家のすぐそばまで草木が迫っている
草木に覆われて、蔦が生えている

正田「3つ目は『周辺に草木が茂っている、またはシロアリ被害に遭っている古民家』です。購入前に、必ずシロアリ被害の有無と、その原因となる周辺環境を調査してください。私が現地調査に行くと、建物が草木に埋もれていたり、外壁に蔦(ツタ)がびっしりと這っていたりする物件に出会うことがあります。Googleマップのストリートビューで見ただけでも、草木に覆われているのが分かるような物件です。こうした日当たりや風通しが極端に悪い古民家は、ほぼ間違いなく構造躯体がシロアリに食い荒らされているか、湿気で腐敗しています」

――草木が茂っていることと、シロアリ被害にはどのような関係があるのでしょうか。

正田「シロアリが繁殖するためには『空気』『養分(木材)』『湿気』の3つの条件が必要です。空気と養分(家そのもの)はどうしようもありませんから、シロアリを防ぐには『湿気をいかに避けるか』が最大の鍵になります。建物の周囲に草木が茂っていると、日陰になり、風通しが悪くなるため、常にジメジメとした、シロアリにとって最高の環境を作り出してしまうんです」

――物件を見学する際、特に湿気やシロアリに注意して見るべきポイントはありますか。

正田「まず方角で言うと、日当たりの良い南側よりも、日陰になりやすい北側です。北側の外壁や基礎周辺は常にジメジメしやすいので、しっかり確認してください。さらに、北側にはお風呂、キッチン、トイレなどの水回りが配置されていることが多いです。つまり北側×水回りの組み合わせは、最もシロアリ被害が発生しやすい危険地帯と言えます」

――水回り特有のチェックポイントはありますか。

正田「古い古民家のお風呂は、現代のユニットバスではなく、昔ながらの在来工法(タイル張りなど)で作られていることがほとんどです。このタイプのお風呂は、定期的なメンテナンスをしていないと、タイルのひび割れなどから水が壁の内部や床下にじわじわと漏れ出しているケースが多いです。見学に行った際、在来のお風呂があれば、その周囲の柱や土台にはすでにシロアリが来ていると疑ってかかるべきです。また、外にガスボイラーなどの設備が置かれている場合、そこから水漏れを起こして外壁が常に湿っていたり、昔のむき出しの配管が建物内に入る貫通部分から雨水が浸入していたりすることがあります。また、配管に発生した結露の水分が原因で、周囲の木材が傷んでいくケースもあります」

――前の住人の使い方や、家の周囲の環境で気をつけるべきことはありますか。

正田「家の周囲、特に北側や日陰になる場所に物を置いている物件は要注意です。例えば、外壁に沿って使わなくなった材木を積み重ねていたり、ダンボールや新聞紙を放置していたりすると、それがそのままシロアリのエサになります。また、家の基礎のすぐそばに植木鉢をたくさん並べている家も危険です。水やりをするたびに建物の足元に湿気を供給しているようなものですから。物が置いてあることで影ができ、床下の換気も悪くなります。エサ・湿気・日陰が揃ってしまいますので、建物の周囲にそういったものが置かれていないか、あるいは過去に置かれていた形跡がないかを、しっかりと確認することが大切です」


前編では、古民家購入で失敗しないために確認すべき「建物の規模」「雨漏り」「周辺環境とシロアリ」について、正田社長に詳しく解説していただきました。目に見える安さの裏には、莫大な改修費用や維持費、構造の傷みが隠れているリスクがあることがお分かりいただけたかと思います。

次回の後編では、買ってはいけない古民家の4つ目の特徴である「融資が受けられない」問題や、「夢だったカフェが開業できなかった」「個人売買でのトラブル」といったより深刻な実際の事例、そして購入前にプロへ相談する重要性についてさらに深く掘り下げます。


リノベーション、古民家再生のお問い合わせはなんば建築工房へ

まずはお気軽にご相談ください。
「実家を二世帯にしたい」「平屋化して将来に備えたい」「古民家を店舗に活用したい」――複数案を比較し、最適解を一緒に決めていきます。

なんば建築工房は、自社職人による確かな施工力と、古民家を含む難しい案件への対応力で、多くのお客様に選ばれてきました。住まいの将来に悩んでいる方、他社で断られた方も、ぜひ一度ご相談ください。

また、古民家再生総合調査(有料)も行っています。
なんば建築工房は、一般社団法人全国古民家再生協会(以下「古民家再生協会」)の会員です。古民家再生協会は、古民家で唯一の全国団体で、古民家鑑定士の有資格者が加入できます。所属しているリフォーム事業者の会員が古民家の調査(インスペクション)をおこない、古民家の状態を明確にし、再生に適した再築基準を用いて安全・安心で快適な暮らしを実現するために活動をしています。

お問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。
または資料請求ページより、古民家再生の事例が載ったパンフレットをお届けいたします。