読み物
もっとなんばを知る

古民家の耐震性能は低いって本当?震度6強でも倒壊しない古民家リノベ

岡山県倉敷市で、長きにわたり地域の住まいを守り続けてきた「なんば建築工房」。 代表取締役社長の正田順也は、(一社)全国古民家再生協会にて、岡山県の代表理事を務め、現役の「古民家鑑定士」としても活動しています。

古民家リノベーションを検討する際、多くの方が心配されるのが”耐震性”です。
「古い家は地震で倒壊する」「壁が少ないから危ない」……そんな話を耳にして、不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、古民家には古民家ならではの「揺れへの対処法」があります。現代の住宅とは全く異なるその仕組みを正しく理解し、適切な補強を行えば、大地震にも耐えうる安全な住まいは実現可能です。

今回は、数多くの古民家再生を手掛け、文化財の耐震改修も行う正田社長に、プロの視点から見た「古民家の耐震の真実」について語っていただきました。

正田 順也 (まさだ じゅんや)
大阪生まれの奈良育ち。大学進学をきっかけに岡山へ移住し、住宅業界歴は30年超。
職人の伝統技術を活かすため、古民家再生・空き家利活用・地域づくりに力を入れている。

(一社)全国古民家再生協会岡山第一支部 代表理事
(一社)全国空き家アドバイザー協議会 岡山県倉敷支部 事務局長
町おこし団体 下津井シービレッジプロジェクト 事務局長
古民家鑑定士インストラクター ほか


「柔」の伝統構法、「剛」の在来工法。決定的な違いとは

――「古民家は地震に弱い」というイメージを持たれがちですが、そもそも現代の住宅とは造りが違うのでしょうか?

正田「根本的な考え方が全く異なります。まず『古民家』の定義ですが、一般的には戦前に建てられた伝統構法の建物を指します。これらは『石場建て(いしばだて)』といって、コンクリート基礎ではなく、石の上に柱が乗っているだけの構造になっています。

伝統構法の特徴は、地震の揺れを『逃がす』ことです。地面が揺れると、柱が石の上で滑ったり、木組み自体がしなやかに変形したりすることで、地震のエネルギーを吸収・分散させます。いわば『柔構造』ですね。

一方、現代の一般的な住宅(在来工法)は、コンクリートの基礎に土台を緊結し、筋交いや合板で壁をガチガチに固めます。これは建物全体を『硬く』して地震に抵抗する『剛構造』です」

――「逃がす」と「固める」。真逆のアプローチなんですね。

正田「そうです。ですから、在来工法しか知らない建築士や工務店が古民家を見ると、『壁が少なくて危ないです。壊して建て替えましょう』という判断になりがちなんです。現代の『固める』基準で見れば、壁が少ない古民家は耐震性がゼロに等しく見えてしまう。でも、伝統構法を理解している私たちからすれば、それは少し違うんです。

ただ、どちらが絶対的に優れているということではありません。 在来工法(剛)は大きな揺れには強いですが、繰り返しの微振動に弱いという特徴があります。伝統構法(柔)は微振動やしなやかな揺れには強いですが、想定を超える巨大な揺れや、長周期地震動のようなゆっくりとした大きな揺れには弱い面があります。

大切なのは、『この家はどのタイプか』を正しく見極め、その特性に合った補強をすることです」

リノベ前の古民家の実態は?なぜ「倒壊」するのか

――能登半島地震などでも倒壊した家屋がありましたが、リノベ前の古民家は、地震に弱いのでしょうか。

正田「倒壊の大きな原因は、構造そのものよりも『メンテナンス不足』にあることが多いです。 どんなに立派な古民家でも、雨漏りを放置して柱が腐っていたり、床下がシロアリに食べられてスカスカになっていたりすれば、当然地震には耐えられません。

また、古民家の特徴として、屋根に土を載せて瓦を葺いているため『頭が重い』という点があります。これは重心が高く、揺れが増幅しやすい要因になります。ただ、昔の知恵として、あまりに大きく揺れた時は瓦をバラバラと落として屋根を軽くし、倒壊を防ぐという仕組みもあります。

ただ、これでは危険な場合もあるので、瓦を一度降ろして土を取り除き、軽い工法で葺き直したり、あるいは軽量の金属屋根に替えたりして、建物の頭を軽くする提案もよく行います」

――過去の増改築が悪影響を及ぼしているケースもありますか?

正田「はい、あります。特に、昭和の高度経済成長期に行われたリフォームは要注意です。 古民家ならではの『差し鴨居(さしがもい)』という、構造を支える太い鴨居を『頭が当たるから』という理由でブチっと切ってしまっていたり、柱が見えないように上からプリント合板を張って洋室にしていたり…。

こういった『見えない部分』で構造が痛めつけられているケースは非常に多いです。これらは表面を見ただけでは分からないので、しっかりとした調査が必要です」

机上の空論ではない。リアルに揺らす「古民家再生総合調査」

古民家総合鑑定
伝統耐震診断

――古民家の耐震性能を正しく知るためには、どのような調査を行うのですか?

正田「一般的な耐震診断は、図面上で壁の量を計算するだけ(壁量計算)のことが多いのですが、古民家でそれをやると『評点0.2(倒壊確実)』のような数字しか出ませんし、実態を反映できません。

私たちが推奨しているのは、古民家再生協会による『古民家再生総合調査』です。 約600項目にわたる目視調査に加え、床下に『モーグル』というロボットを入れてシロアリや腐朽の状況を確認します。

そして最大の特徴が、実際に機械で地面と建物を揺らして計測する『伝統耐震診断(限界耐力計算)』です。 これにより、『東西方向と南北方向、どちらが弱いか』『どのような周波数の揺れ(カタカタ揺れ、ゆらゆら揺れ)に弱いか』という、その家固有のクセがリアルな数値として見えてきます。 図面上の計算(机上の空論)ではなく、実際の建物の『粘り強さ』を計測するので、無駄のない的確な補強計画が立てられるのです」

――補強によって、実際に耐震強度が上がるのですか?

正田「工事前だけでなく、補強工事の途中や完了後にも再度計測を行います。 『設計図通りにダンパーを入れたから大丈夫』ではなく、『実際に揺らしてみて、計算通りの性能が出ているか』を確認するためです。

現代の住宅でも、釘のピッチ(間隔)や打ち方が少し違うだけで強度は変わります。ましてや個体差の大きい古民家ですから、リアルな数値を計測しながら進めることが、本当の安心につながると考えています」

耐震リノベーションの費用と、安心への投資

――耐震補強を行う場合、費用はどのくらいプラスになるのでしょうか。

正田「建物の規模や傷み具合にもよるので一概には言えませんが、フルリノベーションを行う中で耐震補強もする場合、概ね300万〜400万円程度の費用増、というのが一つの基準になってくると思います。

補強の方法としては、壁の中に『制震ダンパー』を入れたり、耐力壁(筋交いや面材)を追加したりします。ダンパー自体は1箇所15万〜20万円程度ですが、それを効果的に配置するための設計費、壁の解体・復旧費などが含まれます。 ちなみに、制震ダンパーは闇雲に入れれば良いわけではありません。柔構造の古民家にガチガチの壁を一部だけ作ると、地震の際にそこに応力が集中して折れてしまうことがあります。全体のバランスを見ながら配置するのが重要です」

――決して安い金額ではありませんが、この費用をどのように考えれば良いでしょうか。

正田「そうですね。リノベーションで一番楽しいのは、キッチンが綺麗になったり、おしゃれなリビングができたりすることだと思います。でも、それ以上に絶対的に大事なのは『安心・安全』です。

これから20年、30年と住み続けていく中で、地震が来るたびに『この家、大丈夫かな…』とビクビクして暮らすのは精神的にも良くありません。 耐震補強を行い、現在の上部構造評点で『1.0以上(震度6強でも倒壊しない)』を目指すことで、万が一の時も命を守り、避難できる家にする。 また、古民家再生総合調査を受けて、所定の耐震基準を満たせば、『リフォーム瑕疵保険』に入れたり、『フラット35』の借入が可能になったりといったメリットもあります」

「解体しましょう」と言われないために。会社選びのポイント

林原美術館の耐震改修事例

――古民家の耐震改修を依頼する場合、どのような会社を選ぶべきでしょうか。

正田「ポイントは『古民家の実績』と『伝統構法への理解』です。

新築中心の会社に相談すると『耐震基準を満たさないので壊しましょう』と言われます。 リフォーム専門会社の中には『壁紙やキッチンだけ綺麗にしましょう』と、構造には触れずに表面だけの化粧直しを提案するところもあります。

選ぶべきは、『新築もリノベもできる技術力を持ち、かつ古民家の施工事例が豊富にある会社』です。 例えば当社では、下津井の『せとうち古民家お試し住宅』や、林原美術館の『東蔵(登録有形文化財)』の耐震改修なども手掛けています。文化財クラスの建物は、絶対に壊すわけにはいきませんから、高度な耐震技術が求められます。

そうした実績があるか、そして『古民家鑑定士』や『古民家再生協会』の会員であるか。これらが、安心して任せられる会社を見極める一つの基準になると思います」


リノベーション、古民家再生のお問い合わせはなんば建築工房へ

まずはお気軽にご相談ください。
「実家を二世帯にしたい」「平屋化して将来に備えたい」「古民家を店舗に活用したい」――複数案を比較し、最適解を一緒に決めていきます。

なんば建築工房は、自社職人による確かな施工力と、古民家を含む難しい案件への対応力で、多くのお客様に選ばれてきました。住まいの将来に悩んでいる方、他社で断られた方も、ぜひ一度ご相談ください。

また、古民家総合鑑定(有料)も行っています。
なんば建築工房は、一般社団法人全国古民家再生協会(以下「古民家再生協会」)の会員です。古民家再生協会は、古民家で唯一の全国団体で、古民家鑑定士の有資格者が加入できます。所属しているリフォーム事業者の会員が古民家の調査(インスペクション)をおこない、古民家の状態を明確にし、再生に適した再築基準を用いて安全・安心で快適な暮らしを実現するために活動をしています。

お問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。
または資料請求ページより、古民家再生の事例が載ったパンフレットをお届けいたします。