Vol.19 古民家で古材を見極める方法

一口に古民家といっても、使える家、使えない家があります。
その見極め方を語ります。
四代目主人・難波 恭一郎のインタビューです。
2016年頃の古い映像ですが、参考資料として公開いたします。
文字起こしは意訳を含みます。ぜひ動画もお楽しみください。
[赤字] インタビュアー
[黒字] 難波会長
古い建物ほど、現地でチェックすることが多いということですね。まず、どんなところを見ますか?
まずは古い建物を見て、残すか残さないか、という話ですね。私は初めに木組みを見ますね。同じ藁屋だとしても、商家と民家では、地区内でも違うんですよ、それから当時多少お金が裕福だったかどうかにもよります。構造体が大きいか小さいか。倹約したというか、現代の家でもそうですが、お金をかけられた家とそうでない家。やはり昔もそうですから、残っている構造体がきちっと組んでいるかどうか。極端な話、10センチ、12センチくらいの桁があって柱があって、柱は12センチくらいあるんですよ。だけど桁がまた同じくらいの丸太で出来ているんですよ。これではちょっと持たない。
ですからやはり、木組みを見て、直し甲斐があるというか、直してもそれがまだまだ持つかどうかを見ます。小さい木は往々にして、目が詰んでても樹齢20年くらい。だから100年持たないわけですよね。樹齢30年以上経った木というのはだいたい大きくなりますから、それなら直してもこれから先まだ持つと思うんです。
組み方によっても違うんでしょうか。
それだけ小さい木で倹約していると、痛みも激しいんですよ。大きい木は油分もまだたっぷり持っているから、まだまだ持つんですよ。直しても直し甲斐がある。古い木がまだこの先100年生きてくれるかどうか、それが重要なことですね。すぐ腐りかけるとか、もう寿命がないな、というものは直す必要がない。これは解体する以外致し方ない。使える材料だけ使って、古い木は再利用、新しい木と今度は一緒にしてやるとか、補強するとか、全体の木組みの良さや木の太さを見て、残した方がいい、いや解体しよう、という判断をします。
壊してしまって、新しいものを建てるというのが本当は簡単なんでしょうか。お施主様もそう思っているケースが多いですか?
お客様の、家に対する思い入れを大事にしないといけないですね。だけど、全体的にこれは持たないんだということになれば、一部壊して、使える材木だけ使いましょう、というおすすめの仕方をするわけです。それでもだめ、と言うことなら解体。古いものを見たときにどうしますかというのはよくあるんですね。一番にまずそこを見ます。まず残すか倒すか、そこの決断ですよね。
実際その辺りの判断が難しいなというケースもありますか?
例えば、裏の納屋の蔵が二棟あるとします。一棟はちゃんとしているんです。もう一棟のほうはもうボロボロ。それから裏の離れがありまして、そちらもボロボロなんですね。結局残したのは、一番後ろにある蔵を一棟のみで、あとの蔵、離れの材料を解体して、その古材を使ってまた増築していったという例もあります。
それから山陽町で施工した藁屋。藁屋の勾配では、鉄板が早く痛みます。まあ瓦にした方がいいだろうということで、藁を全部取り払って、瓦にふき替えた。それは木組みがものすごくしっかりしていました。しかし、二か所雨漏りがしていて、大きな丸太が腐っていました。だからそこは古い木を外して、新しい木をまた入れ込んで古い木をまた元に戻して、という作業もしました。壊すにはもったいない。やはり古い家ですからケースバイケース。見たときにどこが重要か、どこがポイントか見分ける。これはもう経験以外の何物でもないかなと思います。