古民家の欄間が語るもの。手仕事を未来へつなぐために
(古民家 / 古民家再生 / 岡山 古民家リノベ / 古材の利活用 / 古民具買取)
解体された古民家から運ばれてきた欄間
先日、一つのご相談をいただきました。
「この欄間だけは、どうしても捨てられない。誰か大切に使ってくれる人に渡してほしい。」
古民家の解体後、倉庫に保管されていた欄間を、お施主様の想いを受け取る形で当社が引き取りました。写真の欄間は、透かし彫りが美しく、鳥や木々、山並みといった日本の風景が緻密に描かれています。欄間は単なる装飾ではなく、空間に風を通し、光を柔らかく分ける役割を持つ建具。そこには職人がノミ一本で木と向き合った時間と、家族がその下で過ごしてきた暮らしの記憶が刻まれています。
このような建具は、量産品には絶対に出せない「温度」があります。
欄間に宿る手仕事と、日本の住文化
欄間は昔から、日本の住まいの特徴でもある「間の美」を象徴する存在でした。
空間を仕切りながら閉ざさず、家の中に風や気配を通す。
光が欄間を通り、和室や廊下に落ちる影は、まるで絵画のような表情をつくります。
その影のゆらぎを「趣」と呼んできた先人たちの美意識は実に繊細です。
しかし現代では、住宅の洋風化や天井高の変化により、欄間は使われることが少なくなりました。
必要とされなくなった瞬間に「廃棄物」として扱われることが多いのが現実です。
けれど、本来それは「捨てられるようなもの」ではありません。
手間も時間も技も魂も込められた、れっきとした文化資産です。
古材や古民具を救い出し、未来の暮らしへ活かす取り組み
なんば建築工房では、岡山・倉敷を中心に古民家再生や古民家リノベを行う中で、
「残せるものは残す」
「使えるものは活かす」
という姿勢を大切にしています。
今回のように、古民家解体の場で出る古材・古民具を引き取り、倉庫で管理・保管し、次の住まい手へつなぐ取り組みを続けています。
欄間は、新築の和室や店舗空間のアクセントとして再利用できます。
古材は、梁・カウンター材・テーブル・照明台など、設計しだいで魅力的な形に生まれ変わります。
古民具は、宿やカフェ、ギャラリーなどで新たな時間を刻むことができます。
「過去の暮らしを、今の暮らしの中で息づかせる」
それが古材の利活用の本質だと考えています。
空き家古民家を守ることは、地域の文化を守ること
岡山でも空き家は増え続けています。
解体すれば簡単ですが、それは「記憶が失われる」ということでもあります。
私たちが古民家にこだわる理由は、
単に「古い家が好きだから」ではありません。
長い時を受け継いできた木は、新材とは違う深い表情を持ち、
その家で暮らした人のぬくもりを宿しています。
それは地域の歴史・文化そのものです。
欄間を前にすると、私はいつも思います。
「家は、建物だけではなく、人と時間がつくるものだ」と。
この欄間もまた、どこかの暮らしで新しい物語を始めてくれるはずです。
私たちは今日も、古民家の手仕事と文化を未来へつなぐ役目を担っていきます。
なんば建築工房
代表取締役 正田 順也