日本の住文化を、未来につなぐという選択

倉敷市で、古民家リノベーションや茶室を手がける工務店を守る五代目主人の正田です。
現在、東京のマンションの一室に″本格的な茶室“をつくるご依頼を頂き、弊社工場ではその仮組みを進めています。

茶室の「下地窓(したじまど)」をはじめ、細部に至るまで伝統的な意匠を再現し、職人たちがひとつひとつの部材を丁寧に仕上げています。
この時代に、なぜ“茶室”なのか?
それは、時代が変わっても「本物」や「静けさ」を求める心は変わらないからだと感じています。

マンションという都市型の住まいに、あえて手仕事で仕上げた茶室空間を設える。
そこには、空間そのものに深い意味や文化を宿す「住の美意識」があります。
現代の住宅は、性能や効率を重視した合理的なつくりが主流です。
もちろん、それはとても大切な価値です。
しかしその一方で、木のぬくもりや手仕事の質感、時を重ねることで味わいを増す素材の魅力が、日々の暮らしを豊かにしてくれるのもまた事実です。

日本には、茶室や古民家に象徴されるような“住文化”があります。
それは、建築という枠を超えて「人の心を整える空間」だと、私は思っています。
その文化は、放っておけば失われていく。
特に今後、空き家や古民家の急増により、貴重な歴史的建物や街並みが次々に姿を消すことが懸念されています。
私たちは、ただ建てるのではなく、そうした文化を“未来へつなぐ家づくり”をしていきたいと考えています。
たとえば、マンションの一室に“和の空間”を取り入れるという新しい発想。
あるいは、宿泊施設の一室を“古民家風”にし、訪れる人に静けさと心地よさを体験してもらう。
現代の暮らしの中に、伝統のエッセンスを取り込むという選択肢も、今だからこそ価値があると思うのです。
これから家づくりを考える方にこそ、機能だけでなく「本物の空間」が持つ力にも目を向けていただきたい。
そして、もし空き家や古民家との出会いがあれば、その建物が持つ物語に耳を傾けていただけたら嬉しいです。
日本の住文化を守るということは、決して過去にしがみつくことではありません。
むしろ、新しい時代に必要な“心の豊かさ”を育てていく営みなのです。
私たちはこれからも、職人の技と共に、住まいの中に“文化”を残す仕事を続けていきます。