なんば建築工房
スタッフブログ

地域の誇りとともに──だんじりのコマ製作に込める想い

おはようございます。

岡山県倉敷市にある工務店、なんば建築工房の代表の正田です。

今年も、児島の鴻八幡宮で開催される秋祭りに向けて、地域のだんじりの修理依頼を受け「コマ(車輪)」製作を行っています。酷暑のなか、限られた期間での製作は簡単ではありませんが、地元の文化や伝統を支える一端を担わせていただけることに感謝の気持ちを持って取り組んでいます。

だんじりは、単なる曳き山車ではなく、地域の誇りや歴史を象徴する存在です。その中でも「コマ」は、構造的にも技術的にも最も重要な部分のひとつです。力強く、そしてしなやかに地面を捉えながら進むために、木材の選定、乾燥、芯の取り方、組み上げの精度──どれもが長年の経験と知恵が求められます。

今回使用している材は、強靭で粘りのある広葉樹のケヤキ。その特性を活かしながら、中心部には鉄芯を通し、衝撃や摩耗に耐える構造を持たせています。見た目の美しさだけでなく、実際の運行での安全性や耐久性を第一に考え、職人たちが黙々と手を動かしてくれています。

私たちは、これまでにも鴻八幡宮の社務所建築に関わらせていただきましたが、こうした地域の文化や信仰に寄り添う仕事ができることは、建築業を営む者として大きな意義を感じるところです。地域の方々とともに伝統を守り、次の世代につなげていく。その橋渡しが私たちの役目であるとも思っています。

だんじりや神社といった伝統的な文化は、地域の象徴であると同時に、そこに携わる職人たちの「技術の舞台」でもあります。しかしながら、現代の建築業界においては、プレカットや工業製品化が進み、昔ながらの技術や手仕事の場が少なくなっているのも現実です。

こうした伝統行事の中にある仕事は、若い職人たちにとっても学びの場になります。木の性質を読む力、仕口の工夫、時間をかけて培われた感覚──これらは一朝一夕で身につくものではなく、実際に手を動かし、先輩たちの姿を見て覚えていくしかありません。

私たちは、建築を通じて地域に貢献することと、「技術の継承」そのものが地域資源であると考えています。家づくりの現場でも、こうした確かな手仕事を活かす機会を増やしていくことが、これからの工務店の役割なのではと考えています。

だんじりのように、地域とともに時を刻むものには、人の手が生み出す温かさや強さがあります。そんなものづくりの本質を、家づくりにも大切にしていきたい──私たちは、そう考えながら日々の仕事に向き合っています。

今年も地域の祭りが無事に開催され、子どもたちや地元の方々が笑顔でだんじりを曳く姿を見られることを心から願っています。そして、こうした地域文化が次の世代にも受け継がれていくよう、私たちも陰ながら支えていければと思います。