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実例紹介

施工事例

光とともに佇む、マンションの中の二畳中板茶室 /東京都 伝統を受け継ぐ「茶室」の施工事例

アメリカ出身のお施主様が、日本文化、とりわけ茶道への深い関心を持たれていたことから、この計画は始まりました。
築約20年のマンションの一室に設えられた空間の中で、なんば建築工房が携わったのは、裏千家の思想に基づく「二畳中板の茶室部分」です。

※本施工事例では、室内全体や立礼式コーナーを含む空間デザインのうち、二畳中板茶室の造作・素材選定・納まりを担当しています。

朝夕の光を慈しむ、回転する茶室

この二畳中板の茶室は、朝と夕、それぞれの時間帯の自然光を最も美しく取り込むため、位置を変えられる構造を採用。
限られたマンション空間においても、光と向き合い、季節や時間の移ろいを感じる——茶の湯が大切にしてきた感覚を、現代の住まいの中に映し出している。

わずか二畳中板茶室に、日本の伝統素材と手仕事が凝縮されている。

壁:手漉き和紙・漆和紙

天井:萩

床柱:香節(こぶし)

床框:栗

中板:神代杉(太古の杉が地中や水底に埋もれ、長い年月をかけて化石化する手前で発掘された、希少価値の高い木材)
※炉の周りの材

下地窓:女竹(めだけ)
 あえて下地を見せ、昔の茶室の佇まいを今に伝えている。

内部仕上げ:杉材

素材一つひとつの来歴や表情を見極めながら、二畳という最小限の空間に、奥行きと静けさを宿らせた。

身を低くして入ることで、主客が等しく向き合うという茶の精神を表す「にじり口」と、茶室で亭主が風炉でお茶を点てる際、手元を明るく照らし、換気もするための「風炉先窓(ふろさきまど)」。

茶室は一部壁を取り外すことができ、パーティーなど来客の多い時には腰かけて使える設計になっている。

手水鉢(ちょうずばち)
茶室に入る前に心身の「世塵のけがれ」を清めるための水を湛える石の器。
職人の手で彫られた円形の排水口には割れの入った材を選定。

随所に活きる職人の技

工事中の様子

茶室は、なんば建築工房の工場にて、ベテランと若手の大工が約二か月にわたり制作した。
金具を用いず木組みで組み上げ、一度解体したうえで東京都の現場へと運び、再び丁寧に据え付けている。
伝統技術と現代の施工力が重なり合い、なんば建築工房の職人の技が最大限に活かされた茶室となった。


【 光とともに佇む、マンションの中の二畳中板茶室 /東京都】

設計・デザイン
SIMPLICITY
施工
なんば建築工房
Photo
Nik van der Giesen